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目次
療育手帳を持っていると、障がい者向けのサービスが利用しやすくなるなどの多くのメリットがあります。
今回は、療育手帳の基本や受けられるサービスについて説明をしていきます。療育手帳の仕組みや、メリット・デメリットについても解説するので参考にしてください。
療育手帳は、障害者者手帳の一種です。知的障がいのある人が、一貫した療育や支援を受けやすくすることを目的にしています。
知的障がいとは、18歳までの発達期に知能機能と適応機能の両方に障がいが見られる状態のことをいいます。知能機能とは、文字の読み書きや知識などを指します。
適応機能とは、日常生活の中で求められている役割を果たす力のことです。例えば、他人とのコミュニケーションやお金の管理などが挙げられます。
おとなになってから事故や病気で知的機能や適応機能に障がいを負った場合は、療育手帳の対象にはなりません。知的障がいは、子どもの頃に診断を受けることがほとんどです。
もし子どもに知的障がいの症状が見られても、療育手帳の申請をしていない人や大人になってから知的障がいがあるとわかった人は、療育手帳の対象になります。
療育手帳は、法律で定められた制度というわけではありません。都道府県や政令指定都市ごとに手帳の基準や受けられるサービスを決めています。
例えば東京都や横浜市は「愛の手帳」で埼玉県は「みどりの手帳」と療育手帳の呼び方も様々です。IQ(知能指数)の基準や申請に必要な書類も自治体によって異なります。
療育手帳は、18歳より前から知的機能の障がいがあると診断を受けた人が対象です。一般的にはIQ(知能指数)が75以下のお子さんは、療育手帳の対象になります。
ただし、自治体によってIQの基準を70以下に定めているところもあるので注意が必要です。日常生活の様子なども確認したうえで、各自治体が障がいの程度を判断します。
療育手帳は、発達障がいで知的障がいがある人も申請可能です。例えば、IQが低く自閉症スペクトラム障害やADHDによるこだわりが強いお子さんは、療育手帳の対象になります。
反対に発達障がいがあってもIQが高いお子さんは、療育手帳の対象にはなりません。例えば発達障がいで人とのコミュニケーションは苦手でも、IQが高いお子さんは療育手帳ではなく精神障害者手帳の対象になる可能性があります。
障害者手帳は、障がいの程度によって等級をわけるのが一般的です。療育手帳も自治体によって等級の区分は異なりますが、いくつかにわかれています。
等級は主に、重度(A)とそれ以外(B)の2種類です。重度(A)は、IQが35以下で食事やトイレなどで、助けが必要なお子さんやIQが50以下で身体障がいを持つお子さんなどが当てはまります。
例えば北海道や宮城県の等級は、A(重度)とB(中度及び軽度)の2種類です。横浜市は、A1(最重度、重度かつ身体障害1~3級)・A2(重度、中度かつ身体障害1~3級)・B1(中度、軽度かつ身体障害1~3級)・B2(軽度)の4段階にわかれています。
最重度知的障害は、おおむねIQ20以下のお子さんを指すのが一般的です。言葉の発達はほとんどなく、着替えや食事といった身の回りのことに対する介助が必要になります。
重度知的障害が、IQが20~35程度のお子さんが対象です。簡単なあいさつや受け答え以外のコミュニケーションを苦手とするお子さんが多く、着替えや食事などの指示や手助けが必要な子もいます。
中度知的障害は、IQが35~50程度です。自分の身の回りのことは大体できますが、場面にあった服装を選ぶことが難しい子やおつりの計算が苦手なお子さんも多く見られます。
IQが50~70程度のお子さんは、経度知的障害の分類です。食事や着替えなど身の回りのことはできますが、言葉の発達がゆっくりで大人になっても小学生程度の学力にとどまることも多くなっています。
療育手帳を取得する際の判定項目や基準は、年齢によって変わることも多いです。知的障がいや発達障がいの重さは、成長と共に変わる可能性もあります。
知的障がいの程度をはかるテストは、対象の年齢によって適した内容でおこなわれることもあります。そのため東京都などは、0歳~6歳、6歳~17歳、18歳以上で療育手帳の基準が違います。
知的障がいや発達障がいの方向けのサービスを受けるときは、医師の診断書をはじめ多くの書類が必要です。療育手帳は、お子さんに知的障がいがあることを証明する書類として使用することもできます。
療育手帳があると受けられるサービスをわかりやすく説明していきます。自治体や企業によって異なる部分もあるので、事前に確認することをオススメします。
保育園を利用するときは、なぜ保育が必要なのかを証明する書類の提出が必要です。仕事をしていて、日中子どもの世話が難しい家庭などが主な対象になります。
保護者に障がいがある場合や親族の介護が必要な場合も保育が必要な理由として認められることも多いです。療育手帳の写しを提出することで、優先的に保育園が利用できるようになる自治体もあります。
知的障がいや発達障がいを持つお子さんは、集団生活の中で個別のサポートを必要とすることも多いです。療育手帳を持っていると園や学校で加配制度を受けやすくなります。
加配制度とは、よりその子に適した支援ができるように補助の人がつく制度です。加配制度を受けるには、医師の診断書など多くの書類が必要になります。
療育手帳を持っていれば、加配制度の手続きをスムーズにおこなうことも可能です。療育手帳のコピーを提出すれば、申請できる自治体もあります。
自治体によっては、小学生が放課後過ごす学童保育で加配制度を受けることも可能です。公立の小学校に併設されている学童保育では、支援が必要な小学6年生までのお子さんに対応している所もあります。
特別支援学校に入学する場合は、出願のときに障がいの程度を示す書類の提出を求められるのが一般的です。知的障がいの重さを示す書類として、療育手帳の写しを提出できます。
ちなみに、療育手帳を持っているお子さんが、必ず特別支援学校や公立学校の特別支援学級にはいらなければいけない訳ではありません。実際に入学するときは、学校と話し合いながら通う学校を決めることになります。
療育手帳を持っていれば、就労支援も受けやすいです。仕事に必要な技術やコミュニケーション能力を身につける就労移行支援などの対象になります。
療育手帳を持っている人は、特定求職者雇用開発助成金、障害者トライアル奨励金、障害者雇用奨励金などの対象者になりやすいです。特定求職者雇用開発助成金は、障がい者などを雇うと事業所に補助金が支払われる制度になります。
障害者トライアル奨励金は、障がい者などを3ヵ月間お試しで雇う際に企業に支払う補助金です。障害者雇用奨励金は、障がい者を3ヵ月以上雇用した企業が対象になります。
企業に支払われる補助金の多くは、障がい者を雇っていることが条件です。療育手帳をもっていることで、知的障がいがあることを証明することができます。
企業は障害者雇用枠を設けていることも多いです。療育手帳を持っていると自分の障がいの内容や重さを企業に示しやすくなります。
障がい者が生活をしていく中で、本人ひとりでは難しい部分はサポートが必要です。居宅訪問や重度訪問介護は、本人のところに支援の人が来て入浴や食事などの介助・掃除・買い物などの家事支援をおこなうサービスになります。
身体のリハビリをはじめ食事やトイレなど普段の生活に必要なことを学び自立訓練をする施設に通うことも可能です。就労移行支援の作業所では、サポートを必要とする障がい者がそれぞれのペースに合わせて働いています。
知的障がいや発達障がいを持つ人は、自分の気持ちを上手く伝えられない方が多いです。人によっては興味を抑えられずに走りだすこともあれば、想定外の事態が起きてパニックを引き起こすケースもあります。
行動援護は知的障がい者や発達障がい者で、ひとりで外出をすることが難しい場合に支援する人が付いて外出するサービスです。支援をする人は、本人の代わりに気持ちを伝えることや危険を回避できるように見守ります。
障害のサービスを提供している事業所を利用するときは、受給者証が必要です。受給者証を発行するときに障害者手帳の有無は関係ありません。
ただし、受給者証を申請するときに、療育手帳があると手続きが簡単です。どの程度の障がいがあるのかもわかるので、支援計画も立てやすくなります。
災害が起きたときに1人で避難することが難しい高齢者や障がい者を、地域で協力して支援する「災害時要援護者支援制度」を設けている自治体も多いです。療育手帳を持っている人で、条件を満たしていれば「災害時要援護者支援制度」の対象になります。
療育手帳の区分によっては、経済的な支援を受けられることもあります。例えば、納税者や家族に療育手帳を持っている人がいると、所得税や住民税の控除対象になります。
療育手帳があると障がい者向け手当ての給付申請も便利です。「特別児童扶養手当」は、障がいのある20歳未満の子どもを育てている保護者に給付されます。
「障害児福祉手当」は、重度の障がいがあって日常生活が難しい20歳未満のお子さんが対象です。20歳以上で重度の障がいを持つ人は「特別障害者手当」の対象になります。
療育手帳の区分によって、医療費の助成を受けることも可能です。公共交通機関や公共料金の割引も各社で設けています。
JRやその他の鉄道会社やバス会社は、療育手帳を見せると運賃が割引されることが多いです。介助者も一緒に割引されることもあります。
NHKは、療育手帳の区分によって受診料が安くなることもあります。療育手帳を持っている人で重度の障がいがある場合は、事前申請により高速道路などの有料道路の通行料金が割引されます。
その他にも療育手帳を持っている人は、NTTのふれあい案内(電話番号案内)の利用が無料です。通信会社や携帯電話各社も割引制度を設けています。
療育手帳を見せると、遊園地・美術館・映画館などの娯楽施設で割引を受けることも可能です。施設によっては、療育手帳を持ったお子さんがスムーズに利用できるように支援を受けられるサービスもあります。
知的障がいや発達障がいを持つお子さんの中には、長時間ならぶことが苦手な子も多いです。このようなお子さんは、列とは別の場所で待つことができる配慮などがあります。
療育手帳のデメリットは、申請をしてから実際に療育手帳が発行されるまでの手続きの面倒さです。判定を受ける際に面談や判定テストを受ける必要があります。
面談のときは、これまでの生活の中で気になった部分などを聞かれます。母子手帳や通知表などお子さんの様子がわかる資料を求められることも多いです。
判定テストでおこなうことは、IQテストと適応能力検査の2種類です。IQをはかるテストは、積み木や折り紙などの道具を使うテストや数字を読み上げるテストなどがあります。
IQをうまくはかれない乳幼児の場合は、発達指数(DQ)をはかることが多いです。IQやDQをはかるテストは、いくつか種類があります。
トイレ・食事・お金の管理といった日常生活に必要な能力をどの程度持っているのかを見るのが、適応能力検査です。適応能力検査にもいくつかの種類があります。
療育手帳の等級は、IQの高さや適応能力を総合的に見て判断します。IQが低くても適応能力が高いと軽い等級になることも考えられます。
療育手帳には、有効期限が定められています。知的障がいや発達障がいは、成長すると「障がい」の程度が変わることもあるのが主な理由です。
療育手帳を使い続けるには、数年に一度再判定を受けて更新する必要があります。有効期限や更新の頻度は、自治体によって異なるので注意が必要です。
療育手帳は、申請に対するハードルの高さを感じる保護者も多いようです。療育手帳の交付を受けたときに「知的障がい者だと認定された」「重度の障がい者になってしまった」と精神的に落ち込む方も少なくありません。
大人になってから療育手帳を利用している人の中には、偏見につながると思い助成の利用を躊躇(ちゅうちょ)するケースもあります。一方で、療育手帳を受けることで、本人に必要なサポートを受けやすくなったという声も多数存在します。
今回は、療育手帳について説明をしました。療育手帳は、自治体ごとに基準や受けられる支援内容が異なるので注意が必要です。
療育手帳を受けると本人に必要なサポートを受けやすくなります。デメリットよりもメリットの方が多いので、お住まいの自治体に聞くことをオススメします。