分かりにくい法律! 障害に関わることを分かりやすく!

これだけは知っておきたい。児童福祉法の障害に関係するところ

児童福祉法は、児童支援や障がい児支援の基本になる法律です。児童福祉法に書いてあることは、わかりにくいことも多いと思います。

 

ここでは、児童福祉法の中でも障がい児支援に関連する内容を中心に説明していきます。できるだけわかりやすく説明していので、参考にしてください。

 

児童福祉法って? 障害児は支援してもらえるの?

 

児童福祉法は、「18歳未満の子どもがココロもカラダも健やかに成長するために必要な支援や権利を定めた法律」です。保護者や国をはじめ地方自治体に対して、子どもの育成に関する責任を定めています。

 

第1章は、児童福祉法全体に共通する規定を定めた総則の部分です。児童や児童福祉に関連する施設の定義を定めています。

 

障がい児の支援に関することは、第2章と第3章に定めています。第2章の内容が重要な部分なので、わかりやすく紹介していきます。

 

・障がいのある子に対して療育の指導をおこなうことについて

療育とは、ココロとカラダの発達をうながして自立を目指す支援のことです。モノの受け取り方や考え方に働きかける認知行動療法や、日常生活で起こりやすい場面を演じながら他の人とのかかわりを学ぶ「SST」などがあります。

 

・小児慢性特定疾病の治療に必要な医療費の支給などについて

小児がんや慢性腎臓病などの小児慢性特定疾病は、治療期間が長くなるうえに治療費も高くなります。治療費の支給も児童福祉法で保証しています。

 

・児童発達支援や放課後等デイサービスなど自宅から通うサービスについて

障がい児向けのサービスの中でも、主に自宅から通うサービスの条件について定めています。保健師が乳児の家に訪問する「乳児家庭全戸訪問事業」など初期の段階からのサポートについても記載しています。

 

発達障がいは、乳児家庭全戸訪問事業や乳児検診でわかることもあります。出産後のサポート体制についても法律で保証しています。

 

・助産施設、母子生活支援施設、保育所への入所などについて

・障害児入所施設について

障害児入所施設の設置条件や費用の助成などについて記載しています。福祉に関する部分だけでなく医療費も保証しています。

 

・障がい児の相談事業について

障がい児向けのサービスを使うときは、計画を立てる必要があります。計画は保護者が立てることもできますが、専門家にお願いすることもできます。

 

障がい児の相談事業は、保護者やお子さんの希望を聞きながら計画を立てていきます。児童福祉法では、相談事業をおこなう事業所の条件や補助金の仕組みを定めています。

 

・親が行方不明の子や虐待を受けている子など、保護する必要がある子について

・施設などで育てられている子に対する虐待の防止について

・障がい児に関係する施設が都道府県に公開する情報について

・自治体が定める障害児福祉計画について

国をはじめ都道府県や市町村は、障がい児への支援を提供する体制を整えなければなりません。目標を達成するために必要なことを計画するように定めています。

 

子どもにしてはいけないことを定めているのは、第2章の後半にあたる第34条です。障がいや、見た目の違いを見せ物にしてはいけないことなどを禁止事項の最初に定めています。

 

 

第3章で定めているのは、事業・養育里親・養子縁組里親・施設の運営基準や利用の流れについてです。障害児通所支援事業や保育事業など、児童福祉に関係する事業について記載しています。

 

障害児の通所・入所の支援。その給付金

 

通所支援の種類・どんなことができるの?

 

児童発達支援は、小学校就学前までに障がいを持ったお子さんが対象になります。障がい児の地域支援の中心的な立場を担う児童発達支援センターや、地域に根ざした児童発達支援事業所に通います。

 

児童発達支援でおこなうことは、主に食事やトイレといった日常生活で必要な基本動作や集団行動の指導です。お子さんの特性に合わせて、個々の計画に沿って支援します。

 

複数人の子どもと一緒にすごす施設では、コミュニケーションの取り方を学びます。1日通うタイプの施設の場合は、「人の話を聞く」「おとなしく席にすわる」などの集団生活に必要なことを学んでいきます。

 

発達障がいを持つお子さんは、福祉型児童発達支援の対象になることが多いようです。医療型児童発達支援、手足や体幹に障がいを持った医療的支援を必要とするお子さんが対象になります。

 

医療型児童発達支援では、医療型児童発達支援センターや病院などに通います。食器の使い方やトイレの仕方など日常生活に必要な動作を学びます。

 

経管栄養やパウチに対応している施設も多く存在します。関節の拘縮を防ぐためのストレッチなど、医療的なリハビリをおこなうこともあります。

 

放課後等デイサービスは、小学生から高校生が対象の施設です。放課後や休みの日に通って生活能力の維持向上を目的とした訓練や、他のお子さんとの交流を通じて人との接し方を学びます。

 

放課後等デイサービスの中には、学習指導に特化している施設もあります。苦手な部分の指導だけでなく、得意な分野を伸ばす指導も受けることが可能です。

 

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、1人ひとりに対して支援計画を作って指導をします。耳から情報が入りにくいお子さんに対して、絵やカードで情報を伝えます。

 

発達に課題のあるお子さんの中には、手先がうまく使えない子や体幹が弱い子も多いです。折り紙やひもとおしなどの手先を使う動作や、トランポリンなどを利用して体幹を鍛える動作の支援を取り入れることもあります。

 

居宅訪問型児童発達支援は、重度の障がいを持ち児童発達支援や放課後等デイサービスの施設に通えないお子さんが対象です。人工呼吸器をつけているお子さんや病気で感染症にかかりやすいお子さんなどがあげられます。

 

主な支援内容は、支援員がお子さんのところに訪問して日常生活に必要な動作の指導などをおこないます。学ぶ内容は、着替えやお願いの仕方など様々です。

 

保育所等訪問支援は、保育園や乳児院など児童が集団生活をおくる場所に専門の人が訪問する事業です。障がいを持つお子さん以外のお子さんとの集団生活に馴染めるように支援します。

 

専門の人は、障がいに関する知識を持つ「児童指導員」「理学療法士」「作業療法士」

「心理担当職員」などが該当します。障がい児本人には身体の使い方や声かけの仕方を教えると共に、訪問先のスタッフに子どもとの関わり方なども伝えます。

 

入所支援って?

 

障害児入所支援の対象は、障害児入所施設に入所しているお子さんや指定発達支援医療機関に入院しているお子さんです。家庭で療育が難しいお子さんに、施設に住みながら生活に必要なことを教えていきます。

 

障害児入所施設は、福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類が存在します。対象となるお子さんは、身体・知的・精神的に障がいのある児童で「発達障がい」も含まれます。

 

以前は「知的障害児施設」や「盲児施設」など障がいの種類によって施設がわかれていましたが、平成24年に福祉型と医療型の2種類になりました。集団生活を通じて、食事やトイレの仕方などを学びます。

 

身体の機能が落ちないように訓練することや、レクリエーション活動を通じて社会参加をすることもあります。「聞く」「話す」といった人と関わるうえで、必要なことも身につくように支援します。

 

障がいを持つお子さんの中でも医療ケアを必要とするお子さんを対象にしているのが、医療型障害児施設です。自閉症スペクトラムを抱えたお子さんや肢体不自由児、重症心身児などが主な対象になります。

 

医療型障害児入所施設には、呼吸管理や経管栄養などの医療的処置を必要とするお子さんが多くいます。トイレや入浴が難しいお子さんには、医療的な視点から補助をすることになります。

 

例えばパウチをつけているお子さんが、ひとりでパウチの処理ができるように指導をして自分でできることを増えるようにしていきます。同時に関節可動域を広げる練習や体幹を鍛える運動などのリハビリテーションもおこなわれます。

 

お金がかかりそう…支援してもらえる?

 

児童福祉法の中で、障がいを持つお子さんに対する支援に障害児施設給付制度があります。児童福祉法で定めた障害児施設を利用するさいにかかるサービス費用の90%を国や地方自治体が負担する制度です。

 

サービス費用の10%は利用者の自己負担になります。自己負担額は前年度の所得に応じて上限額が定められているので、上限額を超える費用の負担はありません。

 

障害児通所給付の窓口は市町村で、障害児入所給付の窓口は児童相談所です。どちらも家族が申請した後にヒアリング(聞き取り調査)をおこなったうえで支給を決定します。

 

所得が低い方は、食費の減免を受けることができます。就学前の児童が2人以上いる場合も減免を受けられます。

 

負担の上限額や減免を受けられるかは、所得によって変わります。申請するときに担当窓口に相談することをオススメします。

 

どのような施設が利用できるの?

 

児童相談所は、18歳未満の子どもの権利を守る施設です。「児童心理司」「医師または保健師」「指導・教育担当の児童福祉司」などの専門家を配置しています。

 

児童相談所は子育てに関する相談や虐待対応など子どもに関するあらゆる問題に対して、関係機関と連携しながら児童を支援していきます。子どもだけでなく、子育ての相談なども受け付けています。

 

児童福祉法第7条で児童福祉施設に定められているのは、以下の施設になります。

 

「児童家庭支援センター」は、地域の児童や母子の福祉に関する相談窓口です。児童相談所や市町村などと連携しながら家庭の支援をしていきます。

 

「児童発達支援センター」は、主に発達障がいを持つ児童を対象にした総合的な施設です。通所利用している障がい児の療育や地域支援をおこないます。

 

地域支援として主におこなっているのが、障害児相談支援と保育所等訪問支援です。保護者や先生に向けて研修会を開くなど発達障がいに関する知識の普及啓発などもおこないます。

 

障害児相談支援に関しては、乳幼児から成人まで広く受け付けている所も多く存在します。児童相談所をはじめ保育園や学校と連携して、発達障がいを持つお子さんと家族が抱える課題を検討します。

 

母子を援助する施設には、入院助産ができない妊産婦の出産を援助する「助産施設」や配偶者のいない母子を保護する「母子生活支援施設」などがあります。「乳児院」や「児童養護施設」は、虐待などにより家庭で育つことが難しいお子さんが入所する施設です。

 

児童館や児童遊園などの「児童厚生施設」は子どもの遊び場です。「保育所」「幼保連携型認定こども園」は、乳児から小学校入学前の幼児を保護者の代わりに保育します。

 

「児童自立支援施設」は、犯罪や不良行為をおこなった児童などを指導し自立を支援する施設です。

 

「障害児入所施設」は、身体・知的・精神に障がいを持つ児童が入所する施設です。家庭での療育が難しい子どもの食事や入浴など、普段の生活で必要なことや気持ちの表し方などを施設内で学びます。

 

障害児入所施設の中でも医療型障害児入所施設は、医療的ケアが必要なお子さんを対象にした施設です。呼吸管理や経管栄養などの医療的処置やリハビリなども受けられます。

 

「児童心理治療施設」は、心理的困難や苦しみを抱えた児童が治療を受ける施設です。短期入所するタイプと通所するタイプがあります。

 

利用者の中には、ADHDや自閉症スペクトラム障害などの発達障がいを抱えているお子さんも多くいるので、集団と馴染めずに傷ついてしまうケースがります。

 

このようなお子さんに対して、他の子と施設での生活を経験することで自信を取り戻せるように支援をしていきます。

 

児童心理治療施設には、小児科医や精神科医が配置されています。子どもの症状によっては、カウンセリングや服薬治療などもおこないます。

 

法改正について

 

児童福祉法は、児童を取り巻く状況に合わせて何度か法改正がおこなわれています。2016(平成28)年の改正法は、児童虐待に対する対策の強化が目的です。

 

障がい児を含むすべての児童が適切な養育を受けて健やかな成長・発達を自立することを定めています。また、妊娠期から子育て期まで切れ目なく支援できるように、関係機関との連携強化も新たに定められました。

 

まとめ

 

すべての国民は、子どもが心身ともに健やかに成長するように努めなければなりません。児童福祉法は、子どもを取り巻く環境に合わせて障がい児に対する支援の内容や児童虐待防止の強化といった改正を繰り返しています。

 

児童相談所は、子どもだけでなく保護者の悩みや生活に寄り添う施設です。ひとりで抱え込まずに、児童福祉法に定められた支援の活用をオススメします。

 

 

この記事を書いた人
出版社での編集者としての経験を活かし、あらゆる分野の情報発信をしている。リサーチ、分析、整理を得意とし、わかりやすく伝えることを信条としています。四人兄弟の長男で、兄弟のうち二人が重度の知的障害者+自閉スペクトラム症。自身もADHDの注意欠陥障害・自閉スペクトラム症のグレーゾーンとの診断を受けている。その経験から、現在は、発達支援事業にも積極的に関わっている。

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