自閉スペクトラム症(ASD)の子どもさんへのサポート体制を整えましょう

発達障害は病気ではありません。現在では、まだ諸説ありますが、脳の一部の機能障害だと言われています。

治ることはないものですが、特性を理解しながら関わることで、大学にも入り、就職し、結婚することも決して不可能でありません。

知的障害のレベルには寄りますが、むしろ、良い面の特性を伸ばすことで、多くの人のために貢献できる仕事につくこともできるようになる可能性があります。

ですが、それも幼少期からの療育や支援が重要になってきます。

具体的に、自閉スペクトラム症を持っているお子さんが、社会での「生きづらさ」を「生きやすさ」に変えるための支援の体制や、方法についてお伝えしていきます。

自閉スペクトラム症(ASD)かも? と思ったときにはこちら〜子どもさんが自閉スペクトラム症(ASD)と診断されたら

自閉スペクトラム症は特性を認め、理解して関わることが必須です。

自閉スペクトラム症の子どもさんに関して、理解していただきたいことがあります。

定型の子どもさんと比べて、「人との共感力」が高くない

つまり、「誰かと喜びを共有したい」、「目と目を合わせて関わりたい」、「ともに笑いあいたい」、「誰かに好かれたい」、「誰かを好きになりたい」。

そして、それらの関わりから安心感を得たいという気持ちが、あまり持てないのです。

具体的には、相手が家族であっても、「目が合わない」、「笑顔を見せない」、「抱き寄せても拒絶する」といった症状が見られます。

親御さんはそんなときに、子どもさんとの距離を感じるかもしれません。

ですが、少ないながらも「共感したい気持ち」や「共感する力」あります。

同じやり取りを何度も重ねていくうちに、「笑顔のようなもの」を見せることがあるのです。その反応を見逃さずに、子どもさんとの共感する瞬間を大切にして下さい。

子どもさんの嫌がること、喜ぶことを見つける

例えば、掃除機の音を嫌がる素振りを見せるのであれば、音を立てなくて済む、床用モップや、カーペットクリーナーなどを使って掃除するといった方法を考えてみましょう。

また、「手のひらをひらひらさせている」としたら、それは気持ちを落ち着けたいのだなといった、ひとつひとつの子どもの反応や、しぐさを観察し、その理由や伝えたいと思っていることを考えるようにしてみましょう。

最初は、勘違いをするかもしれませんが、観察し、対応の仕方を変えていくことで、子どもさんの嫌なこと、好きなことを少しずつ理解できるようになっていきます。

園や学校などの集団生活は、子どもさんにとっては不安や違和感を感じながら過ごしている時間です。

その気持ちを、「言葉が通じない外国で、地図も財布も持たずに迷子になった」ようだと表すことがあります。

自分が同じような状況になったことを、想像してみて下さい。その場所は、日本と違って、建物も、お店もない未開の地で、相手は槍を持って、自分の前に立っています。

もちろん、言葉は通じません。文化も違うので、ジェスチャーも通じません。そんな場所に置かれたら、不安な気持ちになるのは当然のことだと思いませんか?

実際にところ、症状のないわたしたちは、すべてを理解できるわけではありませんが、彼らの感じている世界は、わたしたちが感じている世界とは違って見えていることは確かです。

そんな状況下での親の役割は、わが子の言葉を相手に理解してもらう通訳であり、行き先で困ることのないようにするコーディネーターのようなものです。

そのためには、やはり子どもさんを「深く理解していく」しかないのです。彼らの行動には、彼らなりの意図があります。

その意図に反して、障害になるものがあったときに、もしかしたら問題行動が起きているのかもしれません。

例えば、療育施設の通わせているときに、お母さんが、自分の子どもさんを呼んだとしましょう。理由はわかりませんが、子どもさんはまっすぐに向ってくるのではなく、ゆらゆらと走り回りながら、あなたのところに向かおうとしていると思って下さい。

その通ろうとしている先に、誰かが立っていたとしたら、もしかしたら、自分にとっては移動を邪魔する存在と認識してしまうかもしれません。そのときに、その誰かに対して、たたいたり、噛んだりという問題行動を起こすようなこともあるのです。

その意図のすべてを理解できるわけでもありませんし、行動の理由をすべてわかるわけでもありません。

ですが、理由があるという前提で行動をみていくうちに、おぼろげながらその理由に一端を見つけることができるかもしれません。

そのように感じたのであれば、行動の理由や動機になるような環境を避けるための対応が見つかるかもしれません。

観察し、子どもさんへの理解を深めることが本当に大切なのです。

家族への支援も忘れずに

自閉スペクトラム症の子どもさん以外の兄弟がいらっしゃる場合、どうしてもその兄弟に我慢を強いることがあるのではないでしょうか?

兄弟はお母さんが、本当に頑張っていることを知っています。兄弟は本当は甘えたいのに、お母さんを困らせるからと我慢することあるのです。

 

わたしには、自閉スペクトラム症+重度知的障害の兄弟がいますが、実際にわたしはそのような感じていました。それは少なからず、その後のわたしの人生に影響がありました。

 

定型の子だから、心配ない。と思うのではなく、「あなたのことも好きだよ。大切だよ」と伝えてあげて下さい。定型の子どもさんには、アイコンタクトやちょっとしたスキンシップでも、お母さんの愛情は伝わります。

障害のある子どもさんの世話で本当に大変だと思います。ですが、僅かな時間でもいいので、話す時間や遊ぶ時間を作って下さい。

定型の兄弟は、人知れず、淋しさを感じています。

成長していくと、自分の兄弟が自閉スペクトラム症であることに気づき、進んで世話をしてくれる強力なサポーターになってくれます。

ですが、その場合でも、兄弟があまりにも自己犠牲を払っている状態にならないように気をつけることも大切です。

親から頼られる存在にあることは、定型の子にとっては嬉しいことでもありますが、度が過ぎると精神的な問題をかかえることもあります。

パパが協力的ではないときには

そんなときには、「療育施設などで子どもさんが頑張っている姿を見せてください」。

実際にお母さんの代わりに、お父さんが子どもさんを連れて療育の現場にいったことがきっかけで、対応が変わることはよくあるようです。

やはり、目に見えない大変さを実体験してもらうと、人任せ、他人事ではなくなってくるんです。

ぜひ、機会を作って、療育施設にパパにも行ってもらって下さい。親が関わる頻度や機械を多く作っている療育施設だと、劇的に変わることも…。

また、療育施設によっては家族からの相談にものっているところもありますので、ぜひ父母そろって指導や相談を受けると良いでしょう。

地域によっては、自閉スペクトラム症の子どもさんを持つ、「親の会」のようなものもあります。それらの場所で、ほかの親たちがなにに悩み、どうやって子育てをしているかを知るのも良い機会です。

一人遊びは悪いことではありません

自閉スペクトラム症の子どもさんは、友だちと一緒に遊ぶのが苦手な場合が多く見受けられ、一般的には一人遊びが好きです。

一方で、「他の子と遊びたい」と思うこともある。ということも知っておく必要があります。

人と話すのが好きな子もいますが、コミュニケーション自体はうまく取れないため、トラブルになることもあります。

幼稚園や保育園に通っていると、世話好きな子が必ずといっていいほどいるものです。

その子が、一生懸命、遊びに誘ったり、身の回りの世話をしてあげたりするのですが、それによって自分のペースや思いを乱されてしまうことがあります。

自閉スペクトラム症の子どもさんは感覚過敏があり、手を握られる事自体にもストレスを感じる子も多いのが現実です。

そうされているうちに、自分の「やめて欲しい」という気持ちを上手く伝えきれずに、世話をしてくれているその子をたたいたり、噛んだりすることもあります。

定型の子どもさんは、そんなことになるとは思いしないもの。

まして、定型の子どもさんの親御さんからすれば、障害がある子どもさんがいる事自体、迷惑だと感じることもあるようです。

これは悲しい現実ですが、園などで体制を整えて、問題が起きないよう配慮していても、トラブルをゼロにすることはできません。

そして、そういったトラブルが起こると、どうしても障害のある子どもさんと親御さんへの人当たりが、厳しくなることも決してすくなくありません。

ですが、実際には、障害のある子どもさんの二割程度は、療育と幼稚園や保育園を併用しています。

現実でいえば、障害の度合いによっては、定型の子どもさんと接する機会は小学校に入る前までしか望めない場合もあります。

小学校で、特別支援学級に入ってしまうと、定型の子どもさんと接する機会は大幅に減少します。小さい時期に、より多くの状況に接することは、プラスに働くことが多く、その場が幼稚園や保育園なのです。

少し話がそれてしまいましたが、子どもさんが「ひとりで遊びたい」と思っているのであれば、無理に友だちを作る必要はないということです。

一人の時間でしか育たない面もたくさんあるのです。

友だちを作るかどうか、一緒に遊ぶ機会を多く作るかどうかは、本人の気持ち次第。本人の望むもの次第で考えるようにしましょう。

自閉スペクトラム症の子どもさんは、集団での遊びが苦手

球技などの集団のスポーツが苦手という自閉スペクトラム症の子どもさんは多いです。もしスポーツをさせるのであれば、体操や水泳、陸上などの一人で比較的マイペースでできるものが向いていますし、本人も楽しめる場合が多いようです。

学校生活が始まったら

本人の特性が原因となって、子どもたちとトラブルになるケースが成長とともに増えてくることがあります。

それらに対処するためには、受け入れ側の学校との共通認識が必須です。

担任の先生や、特別支援教育コーディネーターの先生とは、子どもさんの特性についてよく知っておいてもらいましょう。

また、定期的に学校での様子や変化をみながら対応をしていくための面談もしていくことをオススメします。大事なことは、子どもさんが「学校に行きたくない」と感じさせずに学校生活を楽しめるように、協力体制を作ることです。

クラスメートに子どもさんのことをどこまで伝えるか

障害の診断名などを、クラスメートに伝えてしまうと、それがいじわるや差別の要因になってしまうこともあるようです。ですので、子どもさんの持っている特性を親しい友達に伝える程度に留めるのが良いでしょう。

「〇〇遊びは苦手だから、誘わないで」
「ひとりでいたい時もある子だから、様子を見てあげて」といったように子どもさんにも理解できる様に伝えましょう。

一人になれる場所を用意してもらう

保健室や図書室の先生にはぜひ協力してもらって、嫌なことがあったときに避難できる場所を用意してもらって下さい。

子どもさんには「困ったら保健室にいつでも行っていいんだよ」と伝えるようにすると良いですね。

そういった意味でも、子どもさんの特性は、良いことも悪いことも先生たち、そして親しいクラスメートと共有することで、過ごしやすい環境を作ってあげることができます。

まとめ

自閉スペクトラム症の子どもさんを育てていくためには、親御さんだけではなく、まわりの人達の協力が絶対に必要です。

決して、お母さんだけが抱え込まないようにして下さい。

家族、園や学校の先生たち、療育の先生たち、行政の福祉窓口の相談員さんなど、一緒に成長を見守り、助けてくれる人はたくさんいます。また、お母さんが時々でも休める環境を作ることも大切です。子どもが夜寝ないといった症状があるのであれば、医療機関に相談して薬を処方してもらうのも良いでしょう。

特にお母さんは、きっと一杯一杯で頑張っているはずです。お母さんとの関わりは子どもさんにとって必須です。ですが、周りにもっと頼る、利用して楽をするということも必要です。そのために、行政があり、専門家の方々がいるのです。

お母さんの精神面の安定は、子どもさんの成長にとってよい影響しかありません。お母さんは自分を大事にすることも忘れずに過ごしてください。

 

 

この記事を書いた人
出版社での編集者としての経験を活かし、あらゆる分野の情報発信をしている。リサーチ、分析、整理を得意とし、わかりやすく伝えることを信条としています。四人兄弟の長男で、兄弟のうち二人が重度の知的障害者+自閉スペクトラム症。自身もADHDの注意欠陥障害・自閉スペクトラム症のグレーゾーンとの診断を受けている。その経験から、現在は、発達支援事業にも積極的に関わっている。

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