


女の子の発達障害では少し特別な対応が必要なことも

不登校は発達障害の特性が要因かもしれません

目次
その最大の目的は、子どもさんの得意な面、不得意な面を客観的に把握することです。
文字や言葉で伝えるほうが良いのか?
絵や図形で伝えるほうが良いのか?
といったことがわかるだけでなく、例えば、学校の授業のなかで、どのような科目が得意か、苦手な科目はなにかといった傾向も読み取れます。
家族としての接し方、学校や保育所、幼稚園での関わり方の参考になるものです。
この記事を書いている、わたし自身、成人向けの知能検査を受けましたが、自分の数値を振り替えてみると、色々と思い当たる節があり、もっと小さいときに受けていて自分の特性をわかっていたら、不必要な不安を感じずに済んだかもしれないと感じました。
では、実際にIQテストとはどのようなものなのかを、説明していきます。
知能検査はいくつかの項目があります。
1 全検査IQ(FIQ)
各項目の検査をもとに算出し、知能水準を判断する数値となります。
2 言語性IQ(VIQ)
主に言語に関する能力や、聴覚ー音声処理過程の能力を測定する指標。
学習経験を習得するにあたっての判断力や習慣などと関係性が深いとされています
3 動作性IQ(PIQ)
動作能力や視覚ー運動処理過程の能力を測定する指標。新しい状況に適応する流動性知能と深い関係性があるとされています。
4 言語性下位検査
・知識
一般的な事柄に関する知識について質問し、口頭で答えさせるもの(一般的事実についての知識量)
・類似
共通の概念を持つ2つの言葉を口頭で示し、答えさせるもの(論理的、カテゴリー的思考力)
・算数
算数の問題を口頭で提示し、暗算で制限時間内に答えるもの(計算力)
・単語
単語を口頭で提示し、その意味を答えさせるもの(言語発達水準、単語の知識)
・理解
日常的な問題の解決や社会的ルールなどの理解について質問し、口頭で答えさせるもの(実際的知識を表現する力、過去の経験や既知の事実を正確に評価する力)
・数唱
読んで聞かせた数字を、それと同じ順番、あるいは逆の順番で言わせるもの(聴覚的短期記憶)
5 動作性下位検査
・完成
絵カードを見せ、その絵の中で欠けている重要な部分を指差しか、言葉で答えさせるもの(視覚刺激に素早く反応する力、視覚的短期記憶)
・符号
簡単な記号を書き写させるもの(指示に従う力、事務的処理の速度、正確さ、視覚的短期記憶)
・配列
短い物語を描いた何枚かの絵カードを決められた順序に並べて見せ、物語の意味が通るように制限時間内に並べ替えさせるもの(結果予測の力、時間的な順序の認識)
・積木
モデルとなる模様を提示し、積木を用いて同じ模様を作らせるもの(全体を部分に分解する力)
・組み合わせ
ピースを特定の配列で提示し、それを組合せ、具体的な形を形成させるもの(部分間の関係を予測する力、思考の柔軟性)
・記号
左側の刺激記号が右側のグループの中にあるかどうかを判断させ、回答欄に◯をつけさせるもの(視覚的探索の速さ)
・迷路
迷路問題を解かせるもの(視覚的パターンをたどる力、見通し能力)
6 群指数
・言語理解(VC)
言語的な情報や、自分自身がもつ言語的な知識を状況に合わせて応用できる能力。
言語意味理解・言語的知識・言語的推理・言語表現などが関連します。
「単語」、「類似」、「知識」、「理解」の点数で算出
・知覚統合(PO)
視覚的な情報を取り込み、各部分を相互に関連付け、全体として意味のあるものへまとめあげる能力。非言語的思考、非言語的推理、同時処理などの能力と関連します。
「絵画完成」、「積木模様」、「絵画配列」、「組み合わせ」の点数で算出
・注意記憶(FD)
注意を持続させて聴覚的な情報を正確に取り込み、記憶する能力
注意の範囲、聴覚的な短期記憶、聴覚的な系列化、経時処理、聴覚的情報の記号化などが関連します。「算数」、「数唱」の点数で算出
・処理速度(PS)
視覚的な情報を、事務的に数多く、正確に処理していく能力
反応の速さ、視覚的短期記憶、視覚的情報の記号化に関連します。
「符号」、「記号探し」の点数で算出
・全般的水準(FIQ)、言語性IQ(VIQ)、動作性IQ(PIQ)はどうか
WISC-Ⅲの全IQ、言語性IQ、動作性IQは平均値を100、1標準偏差を15に設定(なお、下位検査の評価点は平均を10、1標準偏差を3としています)。
知的な遅れがない状態は、平均から2標準偏差以上離れていないかどうか、つまり、IQ70以上であるかで判断します。知的障害と考えるかどうかの境は、IQ70~75の幅を持ってみるのが一般的な判断基準となります。
また、教育的分野では、2標準偏差(IQ70~75)の低さから、1標準偏差(IQ85)の低さレベルを「境界線児」と呼ぶことがあります。
IQ | 分類 | 割合 |
---|---|---|
130以上 | 非常に優れている | 2.2% |
120~129 | 優れている | 6.7% |
110~119 | 平均の上 | 16.1% |
90~109 | 平均 | 50% |
80~89 | 平均の下 | 16.1% |
70~79 | 境界線 | 6.7% |
69以下 | 精神遅滞 | 2.2% |
ここまでは、少し難しい言葉が並んできましたが、それぞれの要素について、支援のヒントとなるポイントを整理してお伝えいたします。
【困難として考えられること】
・言葉で理解するのが苦手
・言葉で表現するのが苦手
・言葉を使って考えるのが苦手
【特性からの学習の困難例】
・指示の理解が難しい事が多い
・あることばを間違った意味で使ってしまうことがある
・文法的に不正確な言い方をしてしまう
・音読はできても内容を理解していないことがある
・作文を書く際、内容的に乏しい
・文章題を解くのが難しい
・時間の概念を表す言葉の理解が難しい
【具体的な支援の例】
・言語指示は簡潔で、ゆっくり、はっきりと伝える。またやさしいことばで伝えることも大切
・一度で理解できないときには指示を繰り返して伝える
・集団への指示を理解できないときは、個別に伝える
・絵や図、文字やモデルを使って伝える
・実際の生活や場面と結びつける
・文章の内容を絵で示す
・作文を書くときには、写真や資料などを手がかりとして与える
・文章題を解く際、キーワードに注目させる
(例. 「合わせて」「残りは」など)
・文章題の内容を絵や図で伝える
【困難として考えられること】
・目で見たことを理解することが苦手
・動作で表現することが苦手
・物事を空間的・総合的に処理することが苦手
【特性から生じる困難例】
・聞いた内容を頭の中でまとめることが難しい(なぞなぞなど)
・話している内容がまとまりにくい
・文章を要約することが難しい
・量を比較することが難しい
・形を見分けたり、構成したりすることが難しい
・図形の見取り図や展開図を描くことが難しい
・表やグラフにまとめることが難しい
【具体的な支援の例】
・言葉で説明する
・ひとつひとつ順を追って説明する
・部分から全体へ説明する
・頭の中で操作させるのではなく、具体例を用いる
・図形の特徴などは、言葉で定義する
・モデルを提示するときには、言葉を添えて説明する
・位置や場所などは上下左右、順序、方向、目印などを言語化して確認する
【困難として考えられること】
・言葉や数をすぐに覚えることが苦手
・数の操作が苦手
・注意の集中や持続が困難
【特性からの学習の困難例】
・聞き間違いがある
・聞いたことをすぐに忘れる
・ちょっとした雑音でも注意がそれやすい
・促音や拗音(ようおん)などの特殊音を書き間違う
・書けないひらがなやカタカナがある
・簡単な計算や暗算ができない
・九九が暗唱できない
【具体的な支援の例】
・注意を促してから話しかける
・一度で理解できないときは指示を繰り返す
・絵や図、文字やモデルを補完的に使う
・紙を使って計算させる
・メモを活用する
・言語指示や説明は簡潔に行う
・集団指示で理解できないときは個別に伝える
・覚える事柄を意味づけして覚えやすくする
・九九を覚えられない場合は、九九表を使っても良いことにする
【困難として考えられること】
・目でも見たことをすぐに覚えるのが苦手
・形を正確に捉えるのが苦手
・物事を素早く処理することが苦手(目と手の連携)
【特性からの困難例】
・書くのが遅い
・文字を試写することが難しい
・書くときの姿勢や、筆記用具の使い方がぎこちない
・音読が遅い
・形態的に似た漢字と読み間違う
・演算記号の理解が難しい
・計算が遅い
【具体的な支援の例】
・言葉で説明する
・課題に費やす時間を十分に取る
・文章に空白を入れるなどして見やすい形で示す
・写すお手本をなるべく近いところに置く
・図形などはの特徴は、言葉で定義する
・覚える事柄を意味づけして覚えやすくする
・使いやすい筆記用具を使わせる
・試写する量を減らす
【困難として考えられること】
・言葉で理解することが苦手
・言葉で表現することが苦手
・言葉を使って伝えることが苦手
【特性からの困難例】
・言葉での指示が理解できないため、集団での行動に支障がでる
・日時や場所、話した内容などの理解と表現が不正確なためトラブルに繋がる
・物事の流れや感情を言葉でうまく説明できないため誤解を受けやすい
・他者との会話に参加することが難しい
【具体的な支援の例】
・集団指示ではなく個別に伝える
・一度で理解できない場合は繰り返し指示を伝える
・約束は紙に書いて確認する
・言葉での指示は簡潔に、ゆっくり、はっきりと伝える。やしい言葉を使うことが大切
・絵や図、文字をモデルとして提示して伝える
・絵や写真などを見ながら個別での会話を練習する
・あいさつや約束事などは、実際に実演して練習する
【困難として考えられること】
・目で見たことを理解するのが苦手
・動作で表現するのが苦手
・物事を空間的・総合的に処理するのが苦手
【特性からの困難例】
・場面や状況、相手の表情の意味を理解できないため、その場にあった行動がとれない
・位置や方向、場所などを間違えてトラブルになってしまう
・持ち物の整理や分類がしにくい
・社会的なルールが理解しにくい
【具体的な支援例】
・場所や状況、その時の気持ちなどをわかり易い言葉で伝える
・実演を通して、対人的な行動を練習する
・位置や場所などは上下左右、順序、方向、目印などを言語化して確認する
【困難として考えられること】
・言葉や数をすぐに覚えるのが苦手
・数の操作が苦手
・注意の集中や持続が困難
【特性からの困難例】
・友だちの名前が覚えられない
・約束を覚えていられずトラブルが生じやすい
・相手の話を最後まで集中して聞いていられない
【支援の具体例】
・注意を促してから話しかける
・覚えて欲しい事を他のものに意味づけして覚えやすくする
・覚えておくことをメモする習慣をつけさせる
・言葉での指示や説明は簡潔に伝える
・絵や図、文字やモデルを補完的に使う
・あいさつや、必要なよく使う言い回しは実演を通して練習する
【困難として考えられること】
・目で見たことをすぐに覚えられない
・形を正確にとらえることが苦手
・物事を素早く処理するのが苦手(目と手の連携)
【特性からの行動面・社会性の困難例】
・必要なものをすぐに見つけられない
・授業の準備が間に合わない
・授業時間内に課題が終わらない
・板書を写し終えることができない
・活動のペースがゆっくり。集団の遊びについていけない
【支援の具体例】
・授業に合わせて必要な準備や用具のチェックリストを作る
・使う用途によって持ち物に色分けした目印をつける
・課題の優先順位を考え、授業時間内に行う課題を選ぶ
・学校全体で自分より低学年との活動を取り入れる
学習面での支援、行動面での支援には多くの共通した支援があります。つまり、得意なこと、不得意なことに合わせて支援することで、学校での勉強や、社会性をある程度養うことができるようになります。
言語性IQと動作性IQの乖離(ディスクレパンシー)が15以上ある場合は、「発達障害の疑いあり」とされます。さらに深く群指数のばらつきも15以上ある場合もやはり、「発達障害の疑いあり」と判断されることになります。
群指数の下位項目についても、発達障害がなければ数値の差は5~6以内に収まると言われています。
ただ、それが問題行動になっているかの方かは、DSM−Ⅴの検査が必要になってきます。
※DSM−Ⅴとは
精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)アメリカ精神医学会の定めた、精神科医が患者の精神医学的問題を診断する際の診断基準と、その他の医学的な疾患や物質関連障害との鑑別の注釈を記したもの。
わたしのWAIS-Ⅲ(16歳以上の知能検査)の数値を見ると、この乖離は大きく、言語性IQと動作性IQの差は25超え。群指数の最大値と最小値の差は30を超えていました。
全体の数値は私の場合、平均値または高いの範囲にすべての数値が収まっています。ですが、最大最低で比べると数字が大きく乖離しています。
わたしの場合は、言語性IQ>動作性IQとなり、視覚認知能力に問題ありと仮定されるレベルのようです。
確かに思い返してみると、数学の図形問題は苦手でした。また、運動面でも見たものを真似するというのも得意ではなかったように思います。
また、知覚統合が低い場合、球技が苦手な場合が多いようです。実際、わたしは球技が苦手だったように感じます。
いずれも、文字や言葉から理解するレベルや、算数の計算の能力と比較して劣っているという感じでしたが、上手くできないという劣等感は感じていました。
ですが、この関連の特性が劣っていても、練習を繰り返すことでかなりできるようになります。
この知覚統合の運動面に関しては、幼少期から体を動かす経験を多くしておくことでよい影響があることがわかっています。
運動療育の効果についてはこちら〜 運動をさせると発達障害が改善するって本当!?
ご家庭で運動に取り組みたい場合はこちら〜発達障害の子どもさんと一緒に運動するときに…
この乖離が要因なのか、小学校高学年になるまでは、自閉症傾向の問題行動もありました。また、動作性IQが言語性IQと比べて大きく差があるためと考えられますが、今も「できること=得意なこと」と「できないこと=苦手なこと」の差は大きいのも事実です。
処理速度についても、わたしは平均値ではあるものの、言語性IQの群指数の作動記憶(WICS-Ⅲの注意記憶にあたります)に比べると大きく低いため、視覚的短期記憶に問題があると仮定できるレベルでした。
実際、得意な科目と不得意な科目の差は大きくあったように思います。また、苦手なこと、嫌なことをするときは、集中できないためか、点も取れず成績がよくありませんでした。
その反面、興味があることはとことん調べて、成績を伸ばしていたように思います。その傾向は今も変わりません。興味がないことは全く覚えないという特性のまま、これまで過ごしてきたように思います。
自閉スペクトラム症の子どもさんの場合、知能検査で高い数値を示したとしても、学校の授業についていけないことはよくあります。
そんな場合は、マイペースで学べる環境が良いようです。小学校時代を自分のペースで勉強できる特別学級で過ごして、中高生で普通学級。そして大学へ進学という事例も多くあります。
しかし、これはわたしの事例でしかありません。このIQ検査はあくまでも、子どもさんへ支援を効果的に行うための補完資料でしかありません。
とはいえ、IQ検査は、子どもさんの得意、不得意を見つけられるという大きなメリットがあります。
得意なことが見つかれば、それを伸ばして将来の進学や仕事に活かすことだってできますし、不得意なことを補う支援を重ねることで、子どもさんが自分自身で対策をしながら生活できるようになる可能性を広げられます。
特に自閉スペクトラム症の子どもさんの場合は、6歳までに療育施設、医療機関などの支援をうけることで、この得意を伸ばし、不得意を社会的ルールの中でやっていけるレベルまで高める可能性が高くなります。
小学生になってからの支援では、ほとんどといってほど、「つまづき」ます。
医療機関で知能検査を受けることで、子どもさんの可能性を伸ばす一助となるでしょう。