


女の子の発達障害では少し特別な対応が必要なことも

不登校は発達障害の特性が要因かもしれません

発達障害の種類や診断基準は、多くの資料や情報が発信されているので、ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、このネイスプラス発達支援ライブラリーとしても、お伝えして置かなければならない知識や情報ですので、できるだけわかりやすくまとめてお伝えしていきます。
目次
発達障害とは、子どもさんが成長していく過程の発達のどこかに問題が生じていることを指しています。
時期は、出生時や幼児期、そして学童期は関係なく、生活や勉強、授業に何らかの障害をきたしている状態です。
発達障害は認知の障害で、発達段階での重要な要素の遅れがあることです。また、健常者に比べて、その発達がアンバランスなことも特徴です。日本ではアメリカ精神医学教会のDSM-5における、神経発達障害とされています。
したがって、発達障害であるかの判断は、このDSM-5を用いて行うことになります。
発達障害は現在、大きく3つのグループに分類されるようになりました。
1 ADHD
注意欠陥・多動障害
2 ASD
自閉スペクトラム障害
3 LD
学習障害
DSM-5の基準ではこの3つに分けられ、障害として名が知られているアスペルガー症候群はASDに分類されます。
では、ひとつずつ、それぞれの発達障害の症状と診断基準を見ていきましょう。
アメリカ政府の統計では、10%の子どもさんがADHD障害を持つといわれています。障害に対して、治療あるいは療育を含め何もしなかった場合、思春期になってもその80%が症状が多く残るといわれています。
ADHDの症状は成人になっても残りますが、ある程度少なくなっていきます。ですが、症状の軽減は、各世代での発達障害に対する課題をどう乗り越えたか、何を行ってきたかが大きく影響します。
つまり、障害を放置するということは、成人したあとも、障害に苦しむ度合いが多くなるとも言えます。できるだけ早い段階で療育や治療を行い、子どもさんが自分の障害を理解し、克服できる術や知識を知っていくことがとても大切になってきます。
不注意だと感じる面がある
一定時間ひとつの事に集中することが苦手で、まわりの物音などの刺激で気が散ってしまうことがあります。また、持ち物や約束事にも注意できないことが多く、忘れ物をしたり、物をなくすことも多く見受けられます。時間に遅れることもしばしばあります。
落ち着かない
状況と無関係に体を動かしたり、相手にかまわず話しかけたりする特性があります。脳の働きが原因で自然に動いてしまうため、短い時間でもじっとして、静かにしているのが困難であることが多い傾向があります。
衝動的な行動が見受けられる
欲しい・したい・話したい といった欲求が抑えられず、衝動的な行動を起こしてしまいます。喜怒哀楽などの感情表現も抑えるのが苦手な傾向があります。
診断基準は大きく4つのブロックに分けられています。
1 不注意
2 多動性
3 衝動性
4 その他の診断を補完する項目
これらのブロックごとにさらに項目が細分化されており、その項目の中で当てはまる数や期間でADHDかを診断することになります。
不注意に関しては以下にあげる特性のうち、「特性が6つ(17歳以上は5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたってつづいている」かどうかで診断します。
不注意の項目
・細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい
・注意を持続することが困難
・うわの空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える
・指示に従えず、宿題などの課題を果たせない(←反抗的な行動としてでもなく、指示を理解できないためでもなく)
・課題や活動を整理することができない
・(学業や宿題のような)精神的努力が必要な課題を嫌う
・(宿題、鉛筆、本、道具など)課題や活動に必要なものを忘れがちである
・外部からの刺激で注意散漫になりやすい
・(たとえば連絡帳を書く、教室当番をはたすなど)日々の活動を忘れがちである
多動性に関しても、不注意同様、以下に挙げる項目のうち6項目以上が当てはまった場合は、多動性に障害があると診断されます。
多動性の項目
・着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする
・すわっていなければならない場面で席を離れる
・不適切な状況で、走り回ったり高いところに上がったりする(青年または成人の場合は落ち着かないという自覚のみに限られるかもしれない)
・静かに遊んだり、余暇を過すことができない
・衝動に駆られて、突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない
・しゃべりすぎる
・質問が終わる前に、出し抜けに答えてしまう
・順番を待つことが苦手
・他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする(たとえば、会話やゲームに干渉するなど)
その他はさらに4つの項目について、当てはまるかを確認します
1 不注意、多動性/衝動性の症状のいくかが12歳未満に存在し、障害を引き起こしている
2 これらの症状による障害が2つ以上の種類(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している
3 社会的、学業的または職業的機能において、臨床的にいちじるしい障害が存在するという明確な証拠がなければならない
4 その症状は、統合失調症や他の精神障害の経過で生じたのではなく、それらで説明することもできない
これらすべての項目をチェックした上で、総合的に判断し、4つの診断結果があります
●混合型
過去6ヶ月間、不注意、多動性の基準を満たしている場合
●不注意優勢型
過去6ヶ月間、不注意に関する項目を満たすが、多動性については3つから5つ(17歳以上は4つ以上)あてはまる場合
●不注意(限定)型
過去6ヶ月間、不注意に関する項目を満たすが、多動性については1つから2つあてはまる場合
●多動性/衝動性優位型
過去6ヶ月間、多動性に関する項目を満たすが、不注意はあてはまる項目がない場合
※DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」(日本精神神経学会/監修 国学書院)参照
自閉スペクトラム症とは、DSM-5で再定義されたもので、
・自閉症
・アスペルガー症候群
・特定不能の広汎性発達障害(PDD)
・小児期崩壊性障害(CDD)
などの障害が含まれています。
コミュニケーションが苦手
喜怒哀楽の表現が乏しく、他の人の感情に関心を示しません。相手の表情や曖昧な表現が理解できません。耳からの情報は入らない、理解できない、自分の気持を言葉で伝えるのが苦手です。相手の気持を理解できない事が多いので、良好な人間関係を作るのが難しいといえます。
アンバランスな反応
特定のにおいや、音、光、肌ざわりなどに過剰に反応することがあります。特定の服の肌ざわりを嫌がったり、突然頭をなでると泣き出す、パニックになるといったことも。一方で明らかにケガをしているのに、痛がらないこともあります。また服装面でも、冬でも半袖で平気だったり、感覚が鈍いという反応を示す場合もあります。
こだわる
いつも同じ行動を取る。好きなことにとことんのめり込むといったこだわりが行動に見受けられます。また、急な予定変更や行動変更があるとパニックになることもあります。こだわる内容はひとりひとりことなりますが、ひとつの動きを飽きずに繰り返す特性があります。
ASDの診断は、以下の2つの項目を満たすかどうかで判断します。
・社会的コミュニケーションの障害
・限定された興味
2歳前後で明らかになるケースが多く、3歳でほぼ症状があるかがわかるようになります。
男の子の方が発生率は高く、女の子の4倍と言われています。
そのうち、45%から60%は知的障害を、11%~39%はてんかんを併発していることもわかっています。
原因は現時点では、脳機能の変異とされています。
A.社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点の項目で示されます)
1 社会的・情緒的な相互の関係の障害
2 他者との交流に用いられる非言語コミュニケーション(ノンハーバル・コミュニケーション)の障害
3 年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害
B.限定された反復する様式の行動。興味、活動(以下の2点以上の特徴で示されます)
1 常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方
2 同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン
3 集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある
4 感覚入力に対する敏感性、あるいは鈍感性。あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心
C.症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になってから明らかになるものもある
D.症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている
ここまで、DSM-5での医学的な診断基準について書いてきました。やはり専門用語もあって、正直わかりにくい面があります。そこで、もう少しわかりやすく、ADHD、ASDかどうかの判断をするめやすなるチェックポイントをお伝えします。
・不注意な間違いが多い
・集中力が続かない
・問いかけを無視することがある
・指示に従わないことがある
・順序立てて行動することが苦手
・忘れもの・なくしものが多い
・毎日やっていることを忘れてしまうことがある
・常にそわそわ、もじもじしている
・ずっと座っていることが苦手
・よくしゃべる
・質問をよく聞かずに返答することがある
・順番を待てない。列に割り込んでしまうことがある
・周りの会話やあそびをじゃますることがある
これらの項目にあてはまることが、多いようであれば医師の診断を受ける必要があるといえるでしょう。医師の診断がなければ、必要な福祉を受けられないこともあるので、疑いを感じたら早い時期に子どもさんの状況を知っておくことが、子どもさんの将来にとって大切です。
・人に対して関心が薄い
・人見知りをしない。あるいは極端に人見知りがある
・言葉が出ない
・言葉をオウム返しする
・手のひらを自分に向けて逆さバイバイをする
・相手と視線を合わせない
・人の手をとってものを取る「クレーン現象」
・気に入ったことをいつまでも続ける
・同じ行動や動作をいつまでも繰り返す
・新しいこと、モノ、場所を受け付けない
・不測のことがおこると癇癪を起こす
・目を離すとどこかに行ってしまう
・突然の大きな音が苦手
・痛みに対して鈍感
・偏食
・文字にまったく興味を示さない
・寝付きが悪い。早朝に目が覚めてしまう
これらの障害は3歳を過ぎた頃からはっきりしてきます。早期に気づくためには日頃から子どもさんを観察することが大切になります。夜泣きをしないという子どもさんもいるので、意識して子どもさんの反応を感じるようにすることをオススメします。
LDは日本の統計では、全体の4.5%程度が学習に何らかの障害があることがわかっています。
実際には知能レベルでは問題ないのに、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するという6つの能力のうち、ひとつ以上に関して障害あがる状態のことをいいます。ADHDやASDと併発していることも少なくはありません。
聞くことの障害
・会話が理解できない
・文章の聞き取りができない
・書き取りが苦手
・単語や言葉の聞き間違いが多い
・長い話を理解するのが苦手
・長い話を聞くことに集中できない
・言葉の復唱ができない
話すことの障害
・筋立てて話をすることができないあるいは苦手
・文章として話すことが苦手
・会話に余分なことが入ってしまう
・同じ内容を違う言い方で話せない
・話が回りくどく、結論まで行かない
読むことの障害
・文字を発音できない
・間違った発音をする
・促音を発音できない
・単語を読み間違える(「つくえ」を「つえく」など)
・文字や単語を抜かして読む
・読むのが遅い
・文章の音読はできるが、内容を理解できない
書くことの障害
・文字がかけない
・誤った文字を書く
・漢字の部首を間違う
・単語が書けない。誤った文字が交じることがある
・単純な文章しか書けない
・文法的な誤りが多い
計算することの障害
・数字の位取りが理解できない
・繰り上がり、繰り下がりが理解できない
・九九を暗記しても使えない
・暗算ができない
推論することの障害
・算数の応用問題・証明問題・図形問題が苦手
・因果関係の理解、説明が苦手
・長文読解が苦手
・直接示されていないことを推測することが苦手
LDの子どもさんは、努力しているつもりなのに、ついていけない授業がある。成績が学年があがるとともに下がっていくということが起きてきます。ですが、ここで「がんばれ」「もっと勉強しなさい」という言葉はかえって子どもさんの劣等感を大きくしてしまうこともあります。
確かに叱る場面も必要でしょう。ですが、子どもさんが自信を失いすぎることのないように注意が必要です。
発達障害は脳にもともとある障害といわれています。ですので、治ることはありません。また治すこともできません。障害という言葉が使われていますが、子どもさんが持つ「特性」ととらえることが大切です。
とはいえ、子どもさんが発達障害があるという診断をうけたらショックを受けるのは当然です。診断に疑いを持って、複数の医療機関を回ることもあるかもしれません。それは当然のことです、ですが、発達障害は早い段階で見つかれば、多くのできることがあります。特性に応じては苦手を克服することにチャレンジさせても良いでしょう。
たとえば、自信をつけてもらうという意味でも、運動療育は好結果を生むケースが多くあります。
発達障害の子どもさんの全体の傾向として、体を動かすことが苦手だったり、学校の授業では必須となる社会性に問題があることがあります。
数人のグループで行う運動療育を取り入れた施設では、体を動かすことに自信をもってもらい、少人数とはいえ社会性を養う場として活用できます。
また、学習面に重きをおいた療育施設もあります。子どもさんのどの特性を伸ばしたいかによって多くの選択肢があります。
ですが、それも早期に障害がわかれば、小学校に入る前に、社会性をある程度改善や、運動が何もしていない障害のある子どもさんよりも体を動かすことに慣れておくこともできます。
とりわけ、運動に関しては、体を動かす時間、正しい指導で大きく改善する可能性が高いことがわかっています。
運動の効果についてはこちら〜運動をさせると発達障害が改善するって本当!?
また、そこでつけた自信は、勉強や他の分野でも活かせるのです。
そして、その特性がもたらす、「生きづらさ」をなるべく感じないようにし、子どもさんが生活する上でストレスをできるだけ感じないようにすること。それが親御さんのやるべきことといえるでしょう。そして、子どもさんが持っている「いいところ」を伸ばしてあげましょう。
できていないことが目立ってしまいますし、ついつい叱ったりしまいがちですが、得意なこともあるはずです。子どもさんによっては人より秀でた能力を持っている場合もあります。それをできるだけ早く見つけ、伸ばすためにできることを行うのも親御さんの役目ではないでしょうか?
いずれにしても、早く子どもさんの障害を見つけ、その障害を親子で理解しながら対処できるようにしていくこと。その子どもさんにあった対応をしていけば、成人するときまでには、多くの障害とうまく付き合っていけるようになるはずです。
そのためには、医療機関や療育施設などの専門家と連携を図りながら、子どもさんにとって最も良い選択は何かを試行錯誤していくことが必須といえます。