知っておきたい思春期を楽しく過ごせるように備える知識とは?

思春期の発達障害に備える知識をご紹介します

思春期とは、第二次性徴とともに10歳ごろから始まります。遅い子どもさんでも12歳ごろまで。

(※第二次性徴とは 男子の場合は声変わり。女子の場合は初潮など)

子どもから大人へと、身体的にも、精神的にもおおきく変化していく時期です。

この時期の特徴として、このぐらいの年令になると、まわりの人を気にするようになり、発達障害のある子どもさんの場合、自分が「他の人はできるのに、自分はできない」といった他の人との違いを認識する時期でもあります。

人との違いに違和感や不安などを感じ、悩み始めるのもこの年齢です。

その要因のひとつに発達障害のある子どもさんは、小さいときから「ダメでしょ」や、「どうしてできないの?」といった言葉を親御さんや先生からいわれてきたケースが多いことが挙げられます。

これが「自分はダメ人間なんじゃないか?」という劣等感を抱くことにつながっていることが見受けられます。

それを防ぐには、なるべく小さいときから否定ではなく、励ましや肯定されることを通して、「ダメな人間ではない」ことを知ってもらうことが大切です。

といっても、周りからの小さないじめや偏見なども現れてきて、「ダメではない」と認識していても、「やはりダメなんだ」と感じてしまうことも起きてくる時期でもあります。

そんな時期でも、クラスメイトなどから一目置かれる何かがあると、環境がかわってくることもあります。

そのためには、小さい頃から、子どもさんの得意を見つけ、褒めて、伸ばしてあげることも大切になってきます。

では、子どもさんが思春期に経験する課題について整理していきましょう。

思春期の子どもさんが直面する6つの課題

1 第二次性徴を迎えて、体のエネルギーや性的な大きくなることにどう対応するか
2 友だちや仲間との関係構築をどうやっていくか
3 思春期におこる肉体と精神のアンバランスにどう対処していくか
4 親からの精神的独立。周囲との適応のための自律性をどうやって達成していくか
5 自分のアイデンティティの確立をどのように手にするか
6 社会性や必要な基礎学力をどのように築くか

といったことがあげられます。こういった課題に、どのように対処していくか。事例を上げながらお伝えしていきます。

子どもさんに起こる「なんとなくイライラ」とは?

思春期の子どもさんは、この年代になると、将来のこと、友人関係、勉強のことなどで不安をいだくようになります。

その多くが、自分のアイデンティティの確立に関連しています。

発達障害のある子どもさんの場合は、同様の不安をより強く感じてしまうケースが多く見受けられます。

例えば、ASDの子どもさんの場合は「感覚の過敏性」や相手の気持を読み取ることの難しさ。

ADHDの場合は「不注意」や「衝動性」のために自分の行動をコントロールできない。

LDの場合は、勉強でのつまずきや劣等感などから、子どもさんそれぞれが不安を大きくしてしまうことが考えられます。

 

ですが、実際にはすべての不安を解消することはできません。

 

不安に対処するためには、子どもさん自身が、不安は「自分の中にある、あって当たり前のもの」として生活していくことが必要になります。

つまり、不安とうまく付き合っていくという考え方です。

そのためには、周囲の人が、子どもさんのよき聞き手になることが大切です。

ただでさえ、障害を抱えていることは、自己表現や、言葉で伝えることが苦手。

不安を抱えているときには、何かしらの変化がでてきます。その変化にいち早く気づいてあげることが大切になってきます。

また、特性を持っている子どもさんは、自分を客観的に見られないため、自身のイライラなどもうまくコントロールできないこともあります。

思春期の子どもさんは、理由もなくイライラする事もあります。それを客観的に見られれば、イライラの原因を自分で見つけられます。

それが、特性がある子どもさんには難しいわけです。

そんなときこそ、「イライラしているみたいだね?」といった声掛けをしてあげることで、自分の気持ちに気づくきっかけをつくるサポートができます。

自分を知るという過程が、思春期の子どもさん達には必要なのです。

発達障害の子どもさんに見られる不安要因とは?

障害によって、子どもさんはどんな不安をかかえやすいのか、特性別にご紹介します。

ASDの子どもさんの場合

・他人と話が噛み合わない
・友だちができにくい
・音、光、においが気になってしまう

ADHDの子どもさんの場合

・じっとしていられない
・忘れ物やなくしものが多い
・ひとつのことに集中できない

LDの子どもさんの場合

・努力しているつもりでも、ついていけない科目がある
・最近、成績が下がってきた

これらの問題を子どもさん自身が感じ始めると、不安に感じることが増えてきます。

親御さんを含め、周りの関わる人々がこれらの特性に気を配って、不安に感じたときに、子どもさんが客観的に捉えられるようにサポートしていきましょう。

確かに一筋縄では行きませんし、何度も伝える必要がありますが、周囲のサポートが本当に大切です。

授業についていけなくなっていくのはどうしてでしょう?

小学校までは勉強ができた子が、中学校になって授業についていけなくなる。という話を耳にすることは多くあるのではないでしょうか?

それは、発達障害のある子どもさんにも、もちろん当てはまります。

ASDの子どもさんは、好き=得意な科目。嫌い=不得意な科目がはっきり差が出てきます。

人の話を聞くことが苦手な子どもさんも多いので、先生の言っていることが理解できないこともあり、それが科目によって差がつく要因でもあります。

ADHDの子どもさんは、授業中にじっとしていられず机から離れてしまったり、落ち着いて課題に取り組んだりすることが難しく、授業についていけなくなることも起こってきます。

LDの子どもさんは、特定の科目や分野が極端に苦手であることが特性。その結果、授業内容が難しくなればなるほど、理解できなくなってしまします。

このように要素から、子どもさんの成績が急激に落ちてしまったらどうでしょう。

子どもさんも不安でしょうが、親御さんも不安になってしまうかもしれません。

ですが、不安のあまり「もっと頑張りなさい」「もっと勉強しなさい」といった声かけをしたり、成績が落ちたことをしかったりすると逆効果になることもあります。

子どもさんの劣等感を強めることになってしまうことにもつながります。

特性別・学校の授業についていけなくなる理由

ASDの子どもさんの場合

・暗記は得意。想像力が乏しいため「読解力」が必要な科目は苦手になりがち
・先生の話が理解できない
・複雑な動きが苦手でスポーツについていけない
・スポーツのルールを覚えられない

ADHDの子どもさんの場合

・ひとつの事に集中できない
・忘れ物やなくし物が多い
・同じミスを繰り返してしまう
・衝動的に席を立ったり、隣の人に話しかけたりしてしまう
・順番に並んで待つことができない
・乱暴な行動をとってしまうことがある

LDの子どもさんの場合(特に読字障害)

・文章をどこで区切って読めばよいかわからない
・単語を言葉としてとらえることができず、一字一字なぞるように読む
・「ぬ」と「ね」など形が似ている字を間違える
・文字や行を飛ばして読んでしまう
・「食べる」を「しょくべる」のように音訓の区別がつかない
・「きゃ」「しゅ」「しょ」や「っ」を使う発音が苦手

授業中にここにあげたような、「できなさ」を感じてしまうのが発達障害の子どもさんです。

これらのことを理解した上で、傷つけることなく関わってくれる人ばかりだとよいのですが、先生によっては障害に対しての知識や経験がたりない。クラスメイトからバカにされるなどの問題が起きてくることもあります。

これらの要素に対して過剰な劣等感や苦手意識を持たないようにするためには、公的機関、民間の支援施設や、学校の支援クラスなどを通して、子どもさんの特性や成長に合わせた接し方が必要になってきます。

友人関係にトラブルをかかえることもあります

中学校に入ると、人間関係が複雑化していきます。小さなグループで行動する生徒さんも多く現れます。グループ間での関わりが強くなる。各グループがそれぞれの独自のルールのようなものを作って行動することもあります。

ASDの子どもさんの場合、このルールをまず理解できません。その結果、ルールを守れない、勝手な行動を取るなどしてトラブルに繋がるケースもよくあります。

本人に自覚がなくても、まわりの人々は悪意があると認識して仲間はずれや、いじめの対象になることもあります。

ADHDの子どもさんの場合は、「不注意」「衝動性」が影響し、思ったことをついつい口にしてしまうことがしばしば。

 

これが「うっかり失言」です。

 

本来なら「言わない」ようなことを本人の前で、話してしまうことも…。

もちろん、言った本人は悪気はありません。わがままなわけでもありません。

周りの状況にまで気が回らないだけなのです。

その結果、相手を傷つけてしまうことも少なからず起きてきます。

多感な思春期の子どもさんたちにとっては、それがきっかけで友人関係を壊してしまうこともあります。

発達障害のある子どもさんは、それぞれの特性が要因で、よりよい友人関係を作り上げるのが難しいといえるでしょう。

家庭での支えはとても大切です。ですが、学校で少しでもトラブルを避けるためには、まず学校の先生に子どもさんの特性を理解してもらうことが重要です。

そして、先生からクラスの仲間に、子どもさんの状況を伝えてもらうようにしましょう。

ルールを守れなかったり、ちょっとした失言をしてしまっても、そういう特性を持っていることを周りが理解していれば、大きなトラブルにはなりにくくなります。

周囲の理解が、子どもさんを守ることに繋がるわけです。

ただし、ここで注意が必要です。

それは、具体的な診断名はクラスメイトには伝えないように依頼して下さい。

残念ながら、日本においては、発達障害についての理解や知識が十分にあるとはいえません。

かえって、特別な目で見られて、子どもさんが嫌な思いを抱いてしまうことになってしまうことすらあります。

では、どう伝えてもらったら良いでしょう?

例えば、こんな感じです。

「ひとりでいるほうが好き」
「そそっかしい」
「おしゃべり」

など、子どもさんの特性を具体的に伝えてもらえるようにしてください。

そうすることで、クラスメイトからの理解を得られやすくなります。

心と体の成長と暮らしにくさ

発達障害の子どもさんは、なにかと癇癪を起こしやすい傾向があります。

これは思春期になっても変わりません。

自分の思い通りに行かない、予想外のことが起こるといったときに、大声を出してしまったり、感情を爆発させてしまったりすることがあります。

周囲の人からすると、「なぜ怒っているのか」が理解できません。

このような行動が相手を混乱させてしまい、学校生活や友達関係にマイナスになってしまうこともあります。

ですが、この感情のコントロールは簡単に身につくものでもありません。

たくさんの不安、葛藤を経験し、子どもさんが自分なりに試行錯誤を繰り返すことで自分のコントロール方法を身につけていくしかないのです。

解決策としては、まず子どもさんがどんなときに感情を抑えられないかをリストにしましょう。

・学校での予定が変わった
・苦手な科目で先生の言っていることがわからない
・大きな声で話しかけられた

など具体的に整理しましょう。

その後、リストに上げた状況になったときに、どのようにしたら気持ちを落ち着かせることができるかを考えます。

例えば

・深呼吸をする
・その場から離れる
・好きな言葉のメモを見る
・好きなにおいを嗅ぐ
・好きな音を聞く

といった方法が考えられます。

子どもさんが実際に気持ちを抑えられる方法を一緒に見つけてあげて下さい。

また、特性を利用した対処方法もあります。

ASDの子どもさんの場合、目に見えることは理解しやすい傾向があります。

ですので、感情を「見える化」すると効果的です。

いま感じている不安や怒りの感情が、数値で表したらどのぐらいなのか点数をつけて、グラフや表にしてみます。

そして、その点数に基準を設定します。

がまんできない感情や怒りを100点。なんとか我慢できる状態を50点。怒っているけど大丈夫なら30点といった具合です。

もし、子どもさんが怒っている。あるいは自分でコントロールが難しそうという状況になったときに、「今の気持ちは何点ぐらい?」と聞いてあげて下さい。

そうすることで、子どもさんの気持ちの状態をお互いに共有することができます。

まとめ

発達障害のある子どもさんにとって思春期はとても難しい時期です。健康な子どもさんでも親子関係や友人関係でトラブルが起きやすい時期でもあります。

こうしたトラブルの中のひとつに

異性関係があります。

「友だちとして好き」

「異性として好き」の違いが障害のある子どもさんには理解しづらいのです。

相手の恋愛感情に気づかなかったり、相手が嫌がっている意味がわからなかったりすることがあります。

また、こだわりの強いお子さんの場合、トラブルに繋がるケースがあります。

たとえば、匂いにこだわりがあると、好きな匂いがする女の人について言って匂いをかぐような行動にでることもあります。

ADHDの子どもさんの場合は、異性と適切な距離をとるのが難しいといわれています。これは「衝動性」に起因する行動で、極端な接近や、いきなり告白してしまうこともあります。

また、性的な衝動を抑えられないことも大きな課題でしょう。

ぜひ、親子で恋愛の話をする機会を作って下さい。恋愛映画を見ながら、登場人物の状況や気持ちを説明してあげたり、感じていることを共有したりしてみてください。

それが、相手の気持を理解する一助となってきます。

特に気をつけたい女の子の思春期についてはこちら〜女の子の発達障害では少し特別な対応が必要なことも

ここまでのすべての状態は、個々の特性を理解して、子どもさんに合わせたサポートや関わり方が必須ということです。

思春期に至るまでの親御さんとの関わり、先生や友だち、支援施設の方々などのり会社をまわりにつくってあげること。それがお子さんの「暮らしにくさ」を少しでも軽減していくことに繋がります。

できるだけ小さいときから、理解者が周りにいる環境を作ってあげることが大切になってくるのです。

この記事を書いた人
出版社での編集者としての経験を活かし、あらゆる分野の情報発信をしている。リサーチ、分析、整理を得意とし、わかりやすく伝えることを信条としています。四人兄弟の長男で、兄弟のうち二人が重度の知的障害者+自閉スペクトラム症。自身もADHDの注意欠陥障害・自閉スペクトラム症のグレーゾーンとの診断を受けている。その経験から、現在は、発達支援事業にも積極的に関わっている。

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