発達障害の子どもさんと一緒に運動するときに…

発達障害の子どもさんは、体を動かす経験が少なく、それが要因となって運動が苦手になっているケースが非常に多いのが実情です。

 

苦手なため、体を動かす遊びを避けがちになり、なおさら、運動嫌いになって、体育の授業では嫌な思いを抱くことが多くなってしまいます。

 

それを避けるには、とにかく身体を動かす機会を増やすことが最善の解決策になります。

 

ですので、ぜひ親御さんに子どもさんと一緒に身体を動かす機会を作って頂きたいと思っています。

とはいえ、どんな教え方をすればよいか?
どんなことを一緒にやればよいのか? という疑問があるかも知れません。

そんな親御さんに、どうすればよいのか をお伝えします。

教え方で大切なこととは?

もっとも大切なことは

 

子どもさんが楽しめるよう工夫すること

 

発達障害の子どもさんは、
他人への関心や興味が極めて低い傾向があります。

 

本人も「自分に関わってほしくない」という気持ちを持っている場合が非常に多い。

 

ということは、
ただ「運動をしよう」といっても、なかなかうまく行きません。

 

子どもさんが運動を楽しめるか否か、
そして、好きになってくれるかは、
大人の関わり方次第。

 

では、どうすれば子どもさんが
楽しみながら運動ができるようになるのか?

 

押さえておきたい、関わり方の注意点をお伝えします。

 

「失敗したってかまわないんだよ」という一言

運動が苦手な子どもさんの傾向のひとつに、失敗した姿を見られたくない。

 

できないから、やりたくないという気持ちを持っていることがあります。

 

それが、新しいこと、やったことのないことへチャレンジすることを邪魔しています。

 

ですから、
子どもさんに「できなくてもいいんだよ」
「失敗していいんだよ」と伝えることが大切です。

 

その言葉をつたえることで、
「失敗したってかまわない」と安心させることができます。

 

加えて
「みんな誰だって最初はできない」
「だから、できなくていい」
「うまくできないから、どこを教えればいいかわかる。だから失敗を見せてもらうほうがいい」と伝えてみてください。
(といっても、子どもの失敗のどこが悪いかを指摘できるようになるには知識と経験が必要です)

 

発達障害の子どもさんは
自分でなんとかしようという気持ちが意外に強いので、できるようになるために「人の助けを借りてもかまわない」ということもわかってもらうと良いでしょう。

できるようになるまでのプロセスが大事

できなかったことが「できた」という結果は、
大きな達成感を感じることができます。

 

その達成感と同等以上に大事なのが
「できるようになるまでのプロセス」です。

 

ですが、このプロセスを経験するためには
「できるようになるまでやり続ける」必要があります。

 

そのための壁となるのが
「できないからヤダ」という壁です。

 

そのときにかけて欲しいのが
先程ご紹介した
「失敗したってかまわない」
「できなくてもいいんだ」という言葉です。

 

この言葉だけで
多くの子どもさんが安心して運動をやりだすようになります。

 

本当にぜひ、試して欲しい言葉です。

 

「やってみよう」という気持ちを感じてもらえるようにすること。

 

うまくできないながらも
まずは身体を動かしてみる。

 

これも小さいながらも、ひとつの達成と言えるでしょう。

 

子どもさんがチャレンジし始めたときには
ぜひ、褒めてあげてくださいね!

最初のうちはできたをたくさん褒めることが大切です

 

子どもさんに合わせた小さな一歩を設定する

縄跳び、鉄棒などすべての運動に共通するのが、複数の動きを組み合わせて初めてできるようになること。

 

それをいきなり大人が1から10まで一気にできるようにと思っても、子どもさんはできるようにはなりません。

 

できないことができるようになるためには、一つずつ段階を踏んでできるようにすることが重要です。

 

これは運動だけでなく、勉強や何かを教えるときには当てはまる原則。

 

ただ、すぐには伝えたいことを理解しづらい子もいます。

 

そんなときは
ゼロ→1にあげるまでのステップをさらに細かく設定します。

 

そう、0.1刻みにするイメージです。

 

その0.1ずつの成長が1になればよいわけです。

 

ここで禁物なのが、教える側の「焦り」です。

 

早くうまくなってほしいという思いは少し脇において、子どもさんに合わせることが、とても大切です。

 

初期段階で、ひとつ間違ってしまうと子どもさんの状態を無視してしまうことになり

 

「怖い」「イヤだ」という気持ちになってしまいます。

 

そうなると、次に進むのに
また一苦労してしまうことになります。

 

ですから、
小さな段階をゆっくりと
「できた」「やれた」を積み重ねていくこと。
それに つきます。

 

とくに
ゼロから1にあげていくときは
丁寧にゆっくりと、細かく取り組むことをオススメします。

 

そのプロセスでは
とにかくたくさん褒めながらがポイントです。

 

そして、つぎの
1から2は、自分の力でできるように考えましょう。

 

最初のきっかけがうまくいって、
ある程度できるようになったら、
あとはひとりでやらせることが本当に大事です。

 

そして、自分で次の段階にチャレンジしていこうという気持ちになってきて、「できてきたなあ」と感じたら

 

こう声をかけてあげてください。

 

「練習を続けていけば
もっともっと、うまくできるようになるよ。
あとは自分で練習しようね」と。

根気よく声掛けを

発達障害の子どもさんたちは

一列に並ぶ
立ったまま話を聞く

といったこともうまく出来ないことが多く見受けられます。

 

ここで気をつけなければならないのは

 

できていないことを「伝える」こと。

 

集中が切れてだらけてきたり、
よそ見をしたりしたときは、
すぐに声をかけて、意識をやるべきことに向けるようにしましょう。

 

このことを意識することで
「この場ではこうしなければいけない」
「ここではこうする」というルールへの理解が深まります。

 

そして、できていないことは

 

根気よく何度も言い続ける ことが必要です。

 

今すぐできるようにしようとは考えないように

何事もそうですが、はじめてやることは「すぐにできる」ようにはなりません。

 

大人になった親御さんでも、そうではないでしょうか?

 

だとしたら、運動や身体を動かすこと
人や周りに合わせるのが苦手な子どもさんはどうでしょう。

 

そう、すぐにはできないんです。

 

ですので、教える側の大人が
「すぐにできるように」と思っていると、
どうしても

 

「これだけ言っているのに、なんでできないの!」という気持ちになってしまいがちです。

 

感情を出てしまい、ついつい声を荒げてしまう要因のひとつが
この「すぐにできるようにしたい」という思いを持っていることです。

 

「すぐにできるようにはならない」と思うようにしましょう。

 

そうすると、叱り方がかわります。

 

そして、できていないことは

 

言い続けましょう。

 

「これだけ言っても伝わらないのなら、
もっと言ってみよう。伝え続けよう」という気持ちで子どもさんと接するようにしてみてください。

 

これで意外にも感情で叱ることが減ってきます。

褒め方にもコツがあります

発達障害の子どもさんは、褒められる機会がそう多くありません。

その理由のひとつに

 

「どうやったら褒められるか」を知らないことが挙げられます。

 

結果、自分のやりたいことだけしか、やらないことが多くなってしまいます。

 

一方、褒められることの嬉しさを知っている子どもさんは、行動もしっかりしているケースが多く見受けられます。

 

そこで大切なのが、小さながんばりを褒めることです。

 

「よくできたね〜」
「がんばったね〜」
「すごいじゃない!」

 

と、とにかくいっぱい褒めることが大切です。

そうすることで、子どもさんは
「こうすれば、褒められる」というパターンを理解します。

 

ここが理解できるようになると、話を聞くようになりますし、「やろう」という声かけに対して、「やる」という行動を選んでくれるようになっていきます。

 

そして、さらに「もっとがんばってみる!」という意欲も見られるようになります。

 

ただ、ここからがポイントです。

 

何でもかんでも褒め続けない

褒めることに意味や価値があってこそ、子どもが伸びる「褒める」になります。

 

褒められすぎると、それに慣れてしまい、褒めた効果が小さくなっていきます。

 

ですから、身体を動かすのが苦手だったり、運動が嫌いなうちは、とにかく褒めて、成長を促します。

 

ある程度、自分で頑張れるようになったら、回数は減らして

 

ここぞというときに、しっかり褒めるパターンに変えていきましょう。

 

大きく成長したときや、新しいことにチャレンジできたときなどが、そのタイミングです。

 

そのタイミングで、しっかりと褒めることで、やる気が上がってきます。

 

褒める頻度を減らすことで、「頑張ったときに褒められた」を理解しやすくなります。そうすることで、次にまた頑張るという姿勢を養うことができるわけです。

 

褒め続けるのは最初の段階だけ。

 

褒めるタイミングや、褒め方に工夫をすることが大切なポイントです。

全力の先を意識させる

発達障害の子どもさんに、「全力でやってみて」と伝えても、実は力をセーブしていることがほとんどです。

 

聞くと、「全力でやった」とはいいますが、指導する側から見ると「セーブしている」と感じるケースが多いのです。

 

そんなときには数字を示してあげましょう。

 

「いまのは、本当に100%だったかい? 自分では何%ぐらいだと思う?」

 

この質問をすると、たいていは
「70%ぐらいかな」という答えが返ってくることが多いようです。

 

そこで、もうひと押し

「次は、じゃあ100%で」と伝えましょう。

 

これを何度か繰り返すうちに、自分の限界を知ることができます。

 

そもそも、限界を出した経験がなければ、自分の限界はわからないもの。

 

ですから、力をすべて出す ことを伝えてみてください。

 

子どもさんが「100%」出せたというタイミングが来たら、それをしっかりと褒めつつ

 

「つぎは、プラス20%でやってみよう。頑張って!」と声をかけてあげましょう。

 

そうすると、子どもさんはさらに頑張るようになります。

 

大切なことは、本気を出して、全力を出し切る経験です。

 

ぜひ、子どもさんが全力を出し切る後押しをしましょう。子どもさんが達成感と満足感を感じてくれる機会になります。

まとめ

一緒に運動するときに、大切なことは

 

声かけ です。

 

それぞれの状態に合わせた、声かけです。

 

運動にまだ苦手意識がある段階
自分である程度できるようになった段階
やる気を持って取り組んでいる段階

 

かける言葉がかわってきます。

 

また、褒めるタイミングや頻度、褒め方も変わってきます。

 

やさしさ、きびしさも織りまぜる必要があります。

 

なかなか、そこまでは難しいと感じるかも知れません。

 

そんなときこそ、発達支援事業者の中でも運動に力を入れている専門施設を活用してください。子どもを導く専門家が、子どもさんが伸びる接し方をしてくれます。

 

そして、ぜひその場に親御さんもいるようにしてください。そうすることで、子どもさんにどう対応しているかを見ることができます。

 

そこでの気付きは、日常生活でも活かせるものばかりです。

 

家庭、施設の両方で子どもさんの成長につながる働きかけができれば、障害の改善ははやく進んでいきます。子どもさんとの関わりで抱えていたストレスも軽減され、子どもさんも日々、自信を持って、楽しく生活できるようになっていきます。

 

親御さんと施設の専門家の連携こそが、子どもさんが笑顔になり「生きづらい」という感覚が減っていきます。

 

人に頼ることに躊躇せず、専門家の力を借りてください。それが、家族の笑顔につながることをお約束します。

 

 

この記事を書いた人
出版社での編集者としての経験を活かし、あらゆる分野の情報発信をしている。リサーチ、分析、整理を得意とし、わかりやすく伝えることを信条としています。四人兄弟の長男で、兄弟のうち二人が重度の知的障害者+自閉スペクトラム症。自身もADHDの注意欠陥障害・自閉スペクトラム症のグレーゾーンとの診断を受けている。その経験から、現在は、発達支援事業にも積極的に関わっている。

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