運動をさせると発達障害が改善するって本当!?

発達障害を持っているお子さんに多いのが、体を動かすのが苦手という話をよく聞きます。

実際、デイサービスでは運動が苦手、体を思うように動かせないというお子さんがほとんどです。

発達障害に伴う身体機能障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある多くの子どもさんに見られることがわかっています。

医学的には、脳の一部の発育に要因があると考えられているのが現状です。

 

ですが、脳の素晴らしいところは、不足している能力を補ってくれる機能があるところです。

 

それは、訓練を通して、「できない」を「できる」に変える潜在能力があるということ。

障害があるからといって、「できない子」と捉えるのではなく「本当はできる子」として接することで大きな成長を観ることができます。

ただ、出来るようになるまで、少し時間がかかる。少し丁寧な指導が必要になるというだけです。

関わる従事者としての保育者や指導者が根気よく、出来ていることの微差を見つけ、小さな成功体験に気づかせてあげる。

そうすることで、歩みは遅くとも、カラダを動かすことへの苦手意識を克服していくことができます。

発達障害を持つお子さんが、運動が嫌いだったり、2つの理由に注目します

早速、今回注目する2つの理由をお伝えします

1 完璧主義である

 出来ない。駄目なところを人に見られたくないという意識が強い。やったことのないこと、上手くできそうもないことを避けてしまうことになります。

その結果、できないまま歳を重ねてしまうということになりがちです。

2 自分に自信をなくしている

 運動は実は科学です。カラダの各部位が連携してスムーズな動きができるようになるもの。

ですが、その連携が上手く出来ない=体がうまく動かせない。そして、練習しても上手くならないために、自信をなくしてしまうのです。

ですから、正しい運動の仕方を、教わりながら体で覚えていくことがとても大切。

ところが、運動に関する知識や指導経験がないと、正しい体の動かし方を習得するためのプロセスをなかなか伝えられないんです。

 これらの一連の経験が、自分に自信をなくし、運動が嫌いになり、苦手になっていくことがよく起こります。

関連記事はこちら〜 発達障害の症状が運動で改善! 運動療育の効果とは

発達障害のある子どもさんに、運動がもたらすメリット

そのメリットは、カラダを動かすことだけにとどまらず、勉強や他の分野でも好影響を及ぼすものばかりです。

身体面での変化

1 運動で基礎体力がつく

 身体を動かす機会が増えるということは、単純に体力がつくということでもあります。

実際、体操教室に通い始めた小学生が体が丈夫になり、風をひきにくくなったといった事例も…。

体力・筋力が増し加えられることで、基礎体力が向上します。

その結果、日常生活でも行動や意欲面でも良い変化につながることがあるのです。

基礎体力がないと、なにかやろうとしてもすぐに疲れてしまいがちです。

だから、やる気も起きない。
そして、やるのを最初から諦めてしまうという、あまり良くないパターンにつながってしまうケースも多くあります。

また、筋力が不足すると、姿勢が悪くなる傾向があります。

姿勢が良くないと、体の歪みを招いたり、座っていると疲れやすく、教室での勉強などにも影響を与えることもあります。

運動といっても、最初はスポーツとしてや、運動教室に通わせるだけでなく、公園などでの外遊びをさせること運動への苦手意識を徐々に克服していくことができます。

ですが、専門家の視点から、それぞれのお子さんの出来ない部分を出来るようになる指導をうけるのも良いでしょう。

親御さんも運動に関してはわからないこともあるかもしれません。

そんなときこそ、運動系の教室や、発達支援事業者で運動を取り入れたカリキュラムを取り入れている事業者に相談して、通所させるのも良いかもしれません。

2 体のバランス感覚が養われる

 力の入れ方、体のパーツの連携といったバランスが整ってきます。歩き方、走り方などにも変化が出てきます。

日常生活では、バランス感覚が向上することで、転倒が減って、ケガが少なくなってきます。

それは運動によって下半身が強められるから。踏ん張りも効くようになり、転んだとしても、大きなケガにつながりにくくなります。

精神面での変化

1 集中力アップ!

 発達障害の子どもさんの特徴として、興味があることや好きなことは、ものすごく集中して取り組むことができます。

 一方で、そうではないことには、全く無関心ということもあります。

関心がないから、他のことに気を取られてしまい、注意散漫になって落ち着かないということにつながります。

ただ、そこを克服することは難しく、集中力を持続させる、自分から集中して取り組むといったことは苦手。

しかし、運動の中で「集中する」感覚を養っていくことができます。

たとえば、片足立ち。

練習をするときには、集中力が必要になります。

片足立ち自体は、バランス感覚を養うトレーニングですが、倒れずに立ち続けるためには、片足に意識を集中して、一点に視線を固定して、体全体を使ってバランスを取らなければなりません。

集中力が途切れる=転びやすい という状況なので、練習を重ねることで集中する感覚を身につけることができます。

また、合図の音で立ち上がるといったトレーニングなどは、切替えるスイッチを入れてあげることで、「集中するときはすぐにする」といったことが少しずつ身についていきます。

2 自信がつく

運動が少しずつできるようになってくると、自分は「できるんだ」という自信が生まれます。

「自分はできる」という自己肯定感が実は運動ができることによる、もっとも大きな効果かもしれません。

というのも、勉強は成長の度合いを図るのが、意外に難しく、途中までできているのがわかりにくいもの。

一方、運動は

動きを細分化することで、

さっきはできていなかった、ここまでできるようになった! を褒めることができます。

つまり、全部ができたわけではないけど、途中まで出来たことで進歩を教える側が伝えられる。

その進歩、成長、「できている」を伝えることで、子どもさんは「自分って、ちょっとできるんだ」という気持ちを感じることができます。

この自信が生み出す効果

・小さかった挨拶の声が、元気に明るく大きくなる
・いつのまにか自主練習を始める
・「あんなに苦手だったのに」が、「できた」が自分に自信を植え付ける
・「自分はできるんだ」の積み重ねで、自傷行為も減少
・新しいことにチャレンジする気持ちを持てるようになる
・運動は小さな成功体験をたくさん見つけられるため、「できる」喜びがつぎのやりたいにつながる

3 ストレス発散

 運動はストレス発散効果があることは、皆さんも体験したことがあるでしょう。体を動かした恩恵として、イライラすることが減ったという声を多く聞きます。

 また、性格面でも落ち着く、明るくなったなどの効果も見受けられます。

思い切り体を動かすことは、子どもたちの心の安定にも良い影響を与えると言えるでしょう。

4 体の感覚だけではありません。学習面にも良い影響が出てきます

 バランス系の運動をすると、体幹が少しずつ鍛えられます。その恩恵として、まず姿勢が良くなってきます。

 姿勢が保てるようになると、長い時間椅子に座っていることも容易になり、座っているうちに椅子からずるずると滑り落ちていくようなことが減っていきます。

 また、末端の神経まで意識するトレーニングは、字を書くといった細かい作業にも好影響を与えることがわかっています。

5 睡眠の質があがる

 いうまでもなく、睡眠はとても大切です。しかし、発達障害のある子どもさんは、睡眠のリズムや生活のリズムが乱れていることがよくあります。

 夜遅く寝る傾向がある子どもさんが多く、朝早く起きられない事が多いようです。

その一因として、エネルギーの消耗が不足しているため、眠たくなりにくいということがあげられます。

デイサービスなどの運動の活動を通して、適度な疲労感を感じると、早く寝る。そして翌朝、早く起きれるようになります。

日中、体を動かしているので、睡眠時間が増え、睡眠の質も改善されます。

良い睡眠は、良い生活リズムへとつながり、生活全体のバランスがよくなります。

6 社会性が生まれる

 発達障害の子どもさんは、友だちとの関わりが得意ではない、学校の勉強以外で、大勢の仲間と一緒になにかを行う経験が少なくなりがちです。

 大人になってからは、否応無しに 誰かと 関わっていく必要があります。そういう意味でも、子どものときに社会性を身に着けておくことはとても大切です。

 子どもの社会にもルールや暗黙の了解があります。そうしたことを子どもさんたちは遊びやルールが決められた運動などの中から多くを学んでいます。

 こうしたものはテレビゲームを一緒にやるといった遊び方では養われません。友だちの一緒に体を使って遊ぶ機会を通して学べることです。

 約束を守る。場の空気を読むといった、大人の世界では当たり前のことができなくてつらい思いをしてしまうのは、このような子ども時代の友だちとの関わりが希薄だったことが要因になっていることがあります。

 運動ができないと、体を使った遊びに参加することに抵抗を感じてしまいます。友だちの輪にも入れなくなってしまうこともあります。

 ですが、運動ができると、友だちと運動あそびを通して、一緒に遊ぶ機会が増えていきます。

まとめ

発達障害は、少しだけ苦手を克服する経験をしていくことで、大きく改善していくきっかけになります。

その方法のひとつとして、運動療法はとても効果があります。

勉強や他の習い事と比べて、小さな成功を見つけやすいため、「できた」を指導側がつたえることができます。

脳では「できた」ことを褒められると、やる気につながるドーパミンが分泌されることがわかっています。

また、褒められる機会が増え、子どもさんは自信を少しずつ培っていけます。

それが、運動以外の勉強や、人付き合い、心の安定といったものにつながっていきます。

子どもさんの「できない」を「できる」に変えるための

運動を楽しみながらできる機会を、作ってみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人
出版社での編集者としての経験を活かし、あらゆる分野の情報発信をしている。リサーチ、分析、整理を得意とし、わかりやすく伝えることを信条としています。四人兄弟の長男で、兄弟のうち二人が重度の知的障害者+自閉スペクトラム症。自身もADHDの注意欠陥障害・自閉スペクトラム症のグレーゾーンとの診断を受けている。その経験から、現在は、発達支援事業にも積極的に関わっている。

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